愚痴
「もしさぁ、俺が付き合ってって言ったらどうする?」

 高三の時、基樹は環奈にそんなふうに尋ねたことがあった。

「え、駄目だよ。基樹のことは大好きだし、これからもずっと一緒にいたいから、付き合わない」
「は? 何だよそれ」

 基樹は納得がいかず首を傾げて理由を聞いた。

「だって、もし付き合って上手くいかなかったらどうするの?」
「どうするのって……」
「友達にも戻れなくなったら嫌だもん。基樹は絶対に失いたくない人だから」
「いや、お前それってさぁ、なかなかすげえ告白してねえか?」

 不意に顔面が熱くなったのを覚えている。

「だって、多分基樹が一番私のこと分かってくれてると思うんだよね」
「なら、ぜってえ上手くいくだろ」
「え?」
「あ、いや……」

 そんな会話をしたことを、環奈は覚えているだろうか。


 さすがに大学も一緒という訳にはいかず、別々の大学に入学と同時に一旦は少し距離が出来たが、それでも環奈からの連絡は途切れることなく、友達以上恋人未満のような付き合いは続いていた。

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