愚痴
そうして社会人になった今も、相変わらず環奈の愚痴は続いている。それもそのはず、今回の彼氏は過去最悪と思われる、三度目の浮気男なのだ。環奈が『純ちゃん』と呼ぶその浮気性の純平という男は、環奈が仕事関係で知り合い、初めて自分から告白して付き合ったという男だった。
「絶対ストレスだよ」
「え、何が?」
「最近何か体調が優れないんだよね……」
「だからいつも言ってるだろ。精神衛生上よくねえから、そんな男とは早く別れろって」
確かに今日は全く酒が進んでいない。環奈は相当病んでいるのかもしれない。
「来月、私誕生日でしょ?」
「おお、そうだな」
「去年のこと思い出すんだよね。前日に飲み過ぎた純ちゃんに、誕生日当日の約束すっぽかされたこと……」
「ああ、あったあった! それで俺、お前に呼び出されて、散々愚痴ぶちまけられて……」
忘れることなど出来ない。
思い出したふりをしただけで、基樹はその日のことをはっきりと覚えていた。その日、散々愚痴った後、環奈は静かに涙をこぼした。それが、長い付き合いの中で初めて見た環奈の涙だったのだ。
その姿を目にした基樹は、会ったこともないその純平という男を、「一発殴ってやろうか」と言ったほどだ。
「絶対ストレスだよ」
「え、何が?」
「最近何か体調が優れないんだよね……」
「だからいつも言ってるだろ。精神衛生上よくねえから、そんな男とは早く別れろって」
確かに今日は全く酒が進んでいない。環奈は相当病んでいるのかもしれない。
「来月、私誕生日でしょ?」
「おお、そうだな」
「去年のこと思い出すんだよね。前日に飲み過ぎた純ちゃんに、誕生日当日の約束すっぽかされたこと……」
「ああ、あったあった! それで俺、お前に呼び出されて、散々愚痴ぶちまけられて……」
忘れることなど出来ない。
思い出したふりをしただけで、基樹はその日のことをはっきりと覚えていた。その日、散々愚痴った後、環奈は静かに涙をこぼした。それが、長い付き合いの中で初めて見た環奈の涙だったのだ。
その姿を目にした基樹は、会ったこともないその純平という男を、「一発殴ってやろうか」と言ったほどだ。