結婚直後にとある理由で離婚を申し出ましたが、 別れてくれないどころか次期社長の同期に執着されて愛されています
「じゃ、じゃあ、今日はもういいよ。
なんとかなると思うし」

矢崎くんが営業部の若手を三人も寄越してくれているおかげで、休みが出ても当初の予定よりもスタッフは多い。
それに三日目となればみんな慣れてきて、少し余裕ができるはずだ。

「嫌だ、戻ってくる。
俺がいないと純華、絶対無理するからな」

「うっ」

昨日も彼から声をかけられるまで、水分を摂るのも忘れて走り回っていた。

「わ、わかったよ……」

彼の心配は当然で、引き攣った笑顔でそれを了承した。

眼鏡はとりあえず、セロハンテープで弦をぐるぐる巻きにして応急処置する。

「それで、なにがあったんだ?」

呼んだタクシーが来るまでのあいだに、矢崎くんが聞いてくる。
この距離をタクシーなんて、なんと贅沢な!
さすが御曹司は違うな!
とか思ったが、よく見えないのに公共の交通機関は危険だよね。

「あー、加古川さんが子供の調子が悪くなって出られないって」

仕方ないよねと曖昧な笑みで答える。

「は!?
加古川って司会のヤツだろ?
大変じゃないか!」

矢崎くんは慌てているが、まあそうだよね。

「大丈夫だよ。
司会の段取りと台本は全部、頭に入れてあるし。
別に慌てるほどのことじゃないって」

「……純華は大変だな」

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