結婚直後にとある理由で離婚を申し出ましたが、 別れてくれないどころか次期社長の同期に執着されて愛されています
ゲストから声をかけられ、慌てて意識をステージに戻す。
さっきから集中していないと、疲れて意識が飛びそうだ。
大変なのは知っていたが、これをこなしている加古川さんを尊敬する。
でも、あと少しだから。

「本日はご来店、ありがとうございました。
これですべてのイベントは終了です。
今後もニャオンモールをよろしくお願いいたします」

頭を下げた瞬間、私は真っ白に燃え尽きていた。
頭が、ガンガンする。
周囲の声が、遠い。
それでも最後の気力でステージを下りる。

「純華!」

階段を踏み外したのはわかった。
すぐに誰かが、支えてくれる。

「身体熱い。
おい、きゅうきゅう……」

「……それは、ダメ……」

私がぐったりしているのに気づき、周囲のスタッフが寄ってくる、救急車を呼ぼうとした声を、止めた。

「支えてくれたら、歩ける、から……。
タクシー、呼んで……」

「わかった」

支えてくれた彼――矢崎くんが私を抱きかかえる。
人前でお姫様抱っことか恥ずかしすぎるが、それを抗議するほどの力はない。
すぐにスタッフがのせてくれた、氷の袋が気持ちいい。

「俺が病院に連れていってくる。
あと、任せられるか」

「はい!」

矢崎くんに声をかけられ、その場にいた全員が頷いた。

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