結婚直後にとある理由で離婚を申し出ましたが、 別れてくれないどころか次期社長の同期に執着されて愛されています
彼との子供ができたらそんなふうに育てたいなと思うけれど、私にはそんな未来は来ない。

「仕事、どう?」

「んー、完璧!
……って言いたいところだけど、なにがどう転ぶかわからないもんなー」

珍しく、矢崎くんは自信なさげだ。

「もう!
そういうときは嘘でも、『なにも問題ない。
絶対上手くいくから吉報を待っとけ!』くらい言えばいいんだよ」

これは父からの受け売りだ。
初めての入試の朝、問題が解けなかったらどうしようと心配する私に、同じように言って父は頭をガシガシ撫でてくれた。
嘘でも自分にそう言い聞かせれば気持ちも落ち着いてミスも減り、ひいては成功に繋がる。
おかげでそのときは第一志望に受かったし、そのあともそれで全部乗り切ってきた。
このあいだのイベントのときももちろん、上司に明日はどうだと聞かれ、そう言って大見得を切った。
私にとっては今でも大事にしている、魔法の言葉だ。

「そうだな。
絶対に上手くいくから心配するな。
それで純華を家族に紹介して、結婚をオープンにするぞ!」

自信満々に彼が笑う。
うん、矢崎くんはやっぱり、こうでなきゃ。
でもこうやって、自分が彼との別れを確実にしていっているのは見ないフリをした。

< 129 / 193 >

この作品をシェア

pagetop