せっかく侍女になったのに、奉公先が元婚約者(執着系次期公爵)ってどういうことですか2 ~断罪ルートを全力回避したい私の溺愛事情~
「クラウス様、わかりました! わかりましたから! ……追跡魔法をかけられるのは受け入れます。ただ……目立たないところにしてください。お願いします……」
 私のせいで、プルムスの侍女の品位を落とすことはしたくない。半泣きになって懇願すると、クラウス様は首元に埋めていた顔を上げ、ゆっくりと私を見上げた。
「こんなに泣きそうな顔をして……さっきまではあんなに威勢がよかったのにな?」
 そう言って、悪い笑みを浮かべている。
「懸命にお願いするユリアーナが可愛かったから、言うことを聞いてあげるよ」
「ほ、本当ですかっ?」
「ああ。俺はそんなに鬼じゃないし、君にはとびきり甘いからな」
 にっこりと微笑むクラウス様を見て、私はベッドの上で安堵した――のも束の間。今度はクラウス様の手が、器用に胸元のリボンを解いたかと思うと、ブラウスのボタンを上から外し始めた。
「なっ……なにを……」
 あまりに予想外な行動に、私の思考は停止する。阻止したいのに、なにをされているのか頭が追い付かず、他人事かのようにクラウス様の手がボタンを外すサマを眺めている。
「目立たないところにしろと言ったのは、ユリアーナだろう?」
 ちょうど胸の部分に差し掛かったところで手を止めると、クラウス様はブラウスを思い切り横に開いた。そのせいで、私の胸元が露になる。まさか……。
「君のお望み通り、目立たないところにつけてあげるよ」
 そう言うと、クラウス様はキャミソールからはみ出た私の胸の上部にちゅっと吸い付いた。ピリッとした微かな痛みが一瞬走る。
「うん。綺麗についた」
 クラウス様は私の胸元についた赤いキスマークを愛おしげに撫でると、それは満足そうな顔をして笑って言う。
「……よければユリアーナもつける? 同じところにキスマーク。まぁ、俺はどこにつけられても構わないけどな」
 制服のジャケットをばさりと脱ぎ去って、色気むんむんでクラウス様が私に迫ってくる。こ、このままじゃ襲われる……!
「……ク、ク」
「? どうした? ユリアーナ」
「クラウス様の変態っ!」
 私はクラウス様足の間から自分の下半身を脱出させると、勢いでベッドから飛び降り、胸元を隠して部屋から出ようとした。しかし、ドアの目の前でクラウス様に腕を掴まれそのままぐいっと後ろに引き寄せられる。
「……変態って、昔の君は俺によくああいったことをしていたのになぁ」
「知りません! 今の私とは違うんですから!」 
 悪役令嬢ユリアーナがクラウス様にお色気作戦を実行しまくっていたことは、クラウス様から何度も聞かされている。当時、クラウス様はそれに嫌悪感を抱いていたようだが、今となってはおもしろおかしくそれをネタに私をからかうのだから、勘弁してほしい。
「あとこれ、忘れてる。俺が付け直してあげようか?」
 後ろからぬっとクラウス様の手が伸びてきて、そこには解かれたばかりのリボンが握られていた。
「結構です!」
「あれ。てっきりそうしてほしくてわざと忘れたのかと思ったのに」
 そんなわけあるか! と、心の中で叫びながら、私はクラウス様の手からリボンを抜き取ると、そのまま部屋を出て行った。……あ、肝心の、晩餐どうするかっていうのを聞くの忘れちゃった。
 食堂が閉まるまではまだ時間があるし、私の心が落ち着いてから再度訪ねても大丈夫よね……。
 それにしても、こんな場所にキスマークをつけられるなんて。目立たないところとは言ったけど……! せめて背中とか、二の腕とか、もっとあったじゃない!
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