御曹司は部下の彼女に仕事も愛も教えたい

 唇を離して糸を引いた私の唇を親指でなぞられた。

 「今日はこれで我慢してやる。さあ、送っていく。帰るぞ」

 ふらふらな私を支えると、手を繋いでコートのポケットに入れて歩き出した。
 隣同士で歩いていると手を繋いでいるようには見えない。
 隠しているのが分かる。

 「異動したら、付き合ってること公表しますか?」
 
 「……いや、専務にお前をターゲットにして何かされるのが怖いから隠したままがいい。この提携はあちらを刺激するだけだ。両親は先手必勝の作戦のつもりだろうが、俺は気をつけることが増えた」
 
 真剣な目で私を見た。
 
 「お前を巻き込みたくない。いずればれるだろうが出来るだけ守る」
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