臆病な私の愛し方

あなたを知りたい

 テイキさんの表情は私から見えない。
 そしてしばらくして、テイキさんは私を抱き締めたまま静かにこう尋ねる。

「…ナツ…俺のこと、知りたいか…?」

 …テイキさんのこと…?
 私は大好きなテイキさんのことを何も知らない。

 テイキさんはようやく私に話してくれる気になったのかもしれない。

「…テイキさんのこと、もっと知りたいです…!テイキさんが一緒にいてくれるなら…」

 私はありったけの想いを込めてそう返事をする。


 二人きりの部屋、テイキさんはベッドに座り、私は近くの小さなソファーに座らせてもらう。

 そしてその日の夜、テイキさんは自分のことを私に初めて話してくれた。

 大学を卒業して栄養士になり、何駅か先の施設で働いていること。母親と死別し折り合いの悪かった父親とは離れて暮らしていること…

 今まで私に話さなかったことは悪気はなかったらしい。

「…俺の話なんて、興味がないと思っていたから…」

 テイキさんは下を向いたままそうこぼした。

 おそらくテイキさんは、今まで自分のことを誰かに話す機会なんて無かったのだろう。
 私はそう納得した。

「…私…テイキさんのことを知れて良かったです…」

 私がそう言うと、テイキさんは顔を上げて辛そうに顔を歪める。

 どうしてそんな悲しそうな表情をするんだろう…?
 私はテイキさんの話を聞くことができて、こんなに嬉しいのに…
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