初心な人質妻は愛に不器用なおっさん閣下に溺愛される、ときどき娘
「はい……。嫌ではないのですが……。ただ、口を塞がれてしまったら、息ができなくて……苦しくなりました」
 彼の茶色の目が覗き込んでくる。
「嫌ではなかった、と?」
 それに返事をするのも恥ずかしく、オネルヴァは首を縦に振った。
「そうか……」
 イグナーツは彼女を抱き寄せた。不意であったため、オネルヴァはすべてを彼に預けてしまう。
「きゃ……」
「あ、すまない」
「いえ、こちらこそ。突然のことで驚きました。これも、その……旦那様の魔力を無効化するために必要なことなのですよね?」
 オネルヴァが彼を見上げると、その唇はひくひくと動いている。何か言いたそうにしているようにも見える。
「あの、どうかされましたか?」
 そう尋ねれば、やはり唇はぴくっと動く。その様子をじっと見つめる。
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