初心な人質妻は愛に不器用なおっさん閣下に溺愛される、ときどき娘
「そうだ……。この口づけは、俺の魔力の安定のために必要な行為だと。そう思ってもらえればいい……」
 彼の大きな手がオネルヴァの頬を包み込んだ。両手でしっかりと、そしてどこか優しい彼の手によって包まれると、心臓が高鳴ってしまう。
「目を、閉じてもらえないか?」
「は、はい……」
 深い口づけに興味のあったオネルヴァは、じっとイグナーツを見つめていたのだ。だが、それにはさすがの彼も恥ずかしいらしい。
 オネルヴァは目を閉じた。すぐさま唇に熱が触れる。
 だが、今回は触れるだけではない。彼の唇によって、食まれて舐められる。
「んっ……」
 その感触に驚き、喉の奥から声が漏れた。すぅっと熱が離れる。
「オネルヴァ。少し、唇を開いてもらえないか?」
 目を閉じたまま彼女は頷いたが、唇を開けて何をするかがまったくわからなかった。とりあえず言われた通りに、ぴったりと上と下をくっつけていた唇に、少しだけ隙間を作る。
 少しだけの隙間から、肉厚のざらりとしたものが口腔内に入ってきた。これは、彼の舌である。驚きのあまり、オネルヴァは自身の舌を奥に引っ込めようとしたが、すぐに絡めとられてしまう。
 粘膜と粘膜が触れ合っているだけなのに、ぞくりとした感覚が背筋を襲う。
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