初心な人質妻は愛に不器用なおっさん閣下に溺愛される、ときどき娘
◇◆◇◆ ◇◆◇◆

 年甲斐もなく、彼女に反応してしまったことを恥じていた。
 目の前で食事の準備をしている彼女を意識しないように、気持ちを鎮める。
 だが、じっと彼女を見つめ過ぎたようだ。
 イグナーツの視線に気づいたオネルヴァは首を傾げてニッコリと笑う。
「どうかされましたか? まだ気分がすぐれませんか?」
「いや……」
 そう答えてみるが、腹の奥底には怒りの火種がくすぶっていた。あれだけイグナーツをたぎらせておきながら、その原因を作った彼女は、何事もなかったかのような表情をしている。
「旦那様、食事の準備が整いましたので。わたくしは先に休ませていただきますね」
 その場を立ち去ろうとする彼女の手首を、がしっと掴む。
「今日は、その……君と共に寝たいのだが?」
 そう言葉をかけたときの、彼女の反応が見たかった。少しは意識してくれるのだろうかという淡い期待を抱きながらも、やはりそのような感情が生まれている事実が腹立たしくも感じる。
 自分で自分の気持ちがわからず、うまく制御ができない。
「承知しました。旦那様のお部屋にいけばよろしいですか?」
「いや……二人の部屋で……」
 口の中がからからに渇いていた。
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