初心な人質妻は愛に不器用なおっさん閣下に溺愛される、ときどき娘
「オネルヴァ……」
ナイフの先がカトリオーナの柔肌に沈む。
脅しではないと他の者も思っている。誰も動けずに、その様子を見守っていた。
だが、急所を蹴られた男だけはうんうんと唸っており、その唸り声が不気味に響いている。
「あなたたち。オネルヴァを拘束しなさい。魔法でなんとかできるでしょう?」
顔色一つ変えずに、カトリオーナは叫ぶ。
「無駄ですよ。わたくしは『無力』ですから。魔力を吸収するのです。先ほどだって、拘束された振りをしただけ」
ミラーンが一歩近づいた。だがそれに反応したオネルヴァはすっとナイフの先を動かした。カトリオーナの薄い皮が切れ、つつっと赤い血が流れる。
「奥様。おやめください。奥様が人殺しとなれば、閣下も悲しむでしょう」
「もともとわたくしは人質としてこちらに嫁いできたのです。人質の女が何をしたところで、誰も悲しまないでしょう? キシュアスにとってわたくしの存在は『罪』だったのです。そしてその『罪』を産んだ母親も同罪です。この命をもって『罪』を償います」
「オネルヴァ……本気、なの?」
カトリオーナが静かに問う。
「まさか、冗談だと思っているのですか? キシュアスの王は代わったのです。前の王に通ずる者が生きていてはならないのです。お母様、わたくしと共に死んでください」
ナイフの先がカトリオーナの柔肌に沈む。
脅しではないと他の者も思っている。誰も動けずに、その様子を見守っていた。
だが、急所を蹴られた男だけはうんうんと唸っており、その唸り声が不気味に響いている。
「あなたたち。オネルヴァを拘束しなさい。魔法でなんとかできるでしょう?」
顔色一つ変えずに、カトリオーナは叫ぶ。
「無駄ですよ。わたくしは『無力』ですから。魔力を吸収するのです。先ほどだって、拘束された振りをしただけ」
ミラーンが一歩近づいた。だがそれに反応したオネルヴァはすっとナイフの先を動かした。カトリオーナの薄い皮が切れ、つつっと赤い血が流れる。
「奥様。おやめください。奥様が人殺しとなれば、閣下も悲しむでしょう」
「もともとわたくしは人質としてこちらに嫁いできたのです。人質の女が何をしたところで、誰も悲しまないでしょう? キシュアスにとってわたくしの存在は『罪』だったのです。そしてその『罪』を産んだ母親も同罪です。この命をもって『罪』を償います」
「オネルヴァ……本気、なの?」
カトリオーナが静かに問う。
「まさか、冗談だと思っているのですか? キシュアスの王は代わったのです。前の王に通ずる者が生きていてはならないのです。お母様、わたくしと共に死んでください」