初心な人質妻は愛に不器用なおっさん閣下に溺愛される、ときどき娘
 数年前の内戦のきっかけとなったシステラ族が処刑から免れたのは、キシュアス王国の助けがあったらしい。
 キシュアス王国は、どこかでシステラ族と通じていたのだ。
 だから逆にシステラ族はあの修道院から二人を連れ出したのだろう。
「弱い者ほど、群れたがる……」
 イグナーツがそうポツリと呟いた。その言葉の真相はどこにあるのか。
 葡萄酒を用意したオネルヴァは、彼の隣に座った。
「キシュアスとシステラの件は、なんとか落ち着いた……。アルヴィド殿も、君によろしくと言っていた」
 あれ以降、アルヴィドとは顔を合わせることなく、彼はキシュアス王国へと戻っていった。
「そうですか。エルシーが残念がっておりました」
「まぁ、また会えるだろう。日取りが決まったからな」
「なんの、ですか?」
 オネルヴァが尋ねると、イグナーツは困ったように顔を背ける。だからオネルヴァは彼の顔を覗き込み、じっと見つめる。それでもイグナーツは視線を逸らしたまま、困ったように口元をおさえていた。
「……だ……」
 何かを言葉にしたようだが、はっきりとその言葉は聞こえない。
「え、と。よく聞こえませんでした」
「俺たちの結婚式の日取りだ」
 乱暴に吐き捨てるかのように彼は口にしたが、それが照れ隠しであることを知っている。
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