初心な人質妻は愛に不器用なおっさん閣下に溺愛される、ときどき娘
「結婚式を? わたくしと旦那様が?」
「何もおかしくはないだろう? 俺たちが結婚式を挙げてはならないと?」
「い、いえ……」
 顔を真っ赤にしながらも、結婚式について口にするイグナーツはどこか可愛いとさえ感じる。
「その……驚いたのと、嬉しいのと……」
「嬉しいのか? 俺との結婚式が?」
 どちらかというと、嬉しいのはイグナーツのほうだろう。
「はい。嬉しいです。やはり、結婚式には憧れがありますから」
 オネルヴァはグラスに葡萄酒を注ぐと、それをイグナーツに手渡した。
「これは、ミラーンさんが持ってきてくださったものなのですが」
 オネルヴァの言葉でイグナーツも察するところがあったようだ。ふっと鼻で笑うと、葡萄酒の香りを堪能してから、グラスに口をつける。
「ミラーンが来たのか?」
「あ、はい」
 ミラーンはあのときのことを謝罪しに来た。
 まずは、ジナース酒蔵のレストランでの休憩中に、オネルヴァの飲み物にだけ睡眠薬をいれたこと。彼女に魔法が効かないだろうというのは、ミラーンもイグナーツから聞いて知っていた。
 誰にも知られずにオネルヴァだけあの場から連れ出すにはどうしたらいいか。
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