初心な人質妻は愛に不器用なおっさん閣下に溺愛される、ときどき娘
「どうだ? 怖くはないだろう?」
 唇に舌を這わせている彼の姿に、背筋がぞくりとする。どこか艶めかしい。
「あ、はい。美味しいです。葡萄水よりも少しだけ刺激があるような感じがします」
「もう一口、飲んでみるか?」
「あっ……その……」
 彼がオネルヴァを求めているのをなんとなく感じた。そうやって求められるのも悪くはないのだが、恥ずかしい。
「君が答えてくれないなら、まずはこぼれた酒を拭きとったほうがいいな」
 そう言ってイグナーツは顔を寄せ、唇の脇をぺろりと舐める。
「ひゃっ」
「こことここにも零れている」
 首から胸元にかけて唇を落としていく。
「あぁ、すまない。やはりあのときのことを思い出したら、どうしても許せなくて……」
「ごめんなさい」
「君のことじゃない。君に触れた男のことだ」
 オネルヴァは優しくイグナーツの手首を掴む。
「イグナーツ様になら、いくらでも触れてもらってかまいません」
 その手を、胸元へと誘った。
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