初心な人質妻は愛に不器用なおっさん閣下に溺愛される、ときどき娘
「君は魔法を無効化してしまうからな。君自身に魔法をかけることはできない。だから、こちらに魔法付与をしておいた」
「魔法付与?」
「君の居場所がすぐにわかるように。いや、この指輪がどこにあるのかがわかるような魔法だな。俺の指輪と対になっている」
 なんて答えたらいいかがわからなかった。今回は、その指輪の魔法のおかげで助かったのだが、これではオネルヴァの居場所はイグナーツに筒抜けではないか。いや、夫婦とはそういうものなのだろうか。
「それよりも」
 オネルヴァは話題を変えた。
「葡萄酒の葡萄は、こちらの領地で作られているものと聞いたのですが」
「ああ。今度は、葡萄園にも連れていってあげよう。こちらでの仕事も落ち着いたから、そろそろ王都に戻らなくてはならないが」
「では、次にこちらに来たときの楽しみにします」
 オネルヴァもグラスに手を伸ばすが、彼女のグラスに入っているのは葡萄水である。
「君は、お酒は飲まないのか?」
「飲んだことがありません。だから、ちょっと怖いのです」
「そうか……」
 イグナーツがグラスの酒を大きく口に含む。そしてオネルヴァの顎をとらえ、そのまま口づける。
「……んっ」
 喉元を通り抜ける熱い液体。飲み干せなかった分が、口の端から溢れ首筋を流れていく。
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