初心な人質妻は愛に不器用なおっさん閣下に溺愛される、ときどき娘
 彼が口にしていた通り、王都テシェバは酷い有様だった。いや、テシェバだけではない。アルヴィドの父が治めていたラーデマケラス領も、民は飢えて渇いていた。
 備蓄していた食料でなんとかしのいできたが、これでは籠城戦になると思った当時のラーデマケラス公爵が、王宮へと兵を挙げたのだ。
 彼の動きに賛同する者は多かった。むしろ、王宮内にいる者たちも、王政に不満を持つ者が多かった。不満は一つが爆発すると、連鎖していくものだ。
 王に味方する者などほとんどいなかった。
 王と王子に剣を向けたのはアルヴィドである。彼から見たら伯父と従兄弟。だが、この国のためにも彼らを生かしておいてはならない。
 冷静に判断した彼は、王と王子の首を刎ね、城門に晒した。
 アルヴィドは包み隠さず、そのすべてをオネルヴァに伝えたのだ。
 オネルヴァは、自分の父と兄の最期を聞いても、不思議なことに涙一つ零れてこなかった。
 一つの歴史が終わったのだと、そう思っただけである。
「ああ、今日の分は終わった。何も君が心配する必要はない」
「ですが……。まだ、彼らの生活は落ち着いていないのでしょう?」
「そうだな。だが、もう食べ物に困るようなことはない。これも、ゼセール王国のおかげだ」
 ゼセールの名が出ると、オネルヴァの心がチクンと針が刺さったように痛んだ。
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