初心な人質妻は愛に不器用なおっさん閣下に溺愛される、ときどき娘
 カタカタと馬車に揺られながら、オネルヴァはぼんやりとしていた。
 何事もなければ、今日中に国境の関所に着くはずだ。
 車内は静かだった。オネルヴァについてきた侍女も、オネルヴァが王宮で暮らすようになってからつけられた侍女で、必要最小限の会話しかない。従者にいたっては、腕が立つ者としか聞いていないから、軍の人間なのだろう。
「オネルヴァ様。お疲れではありませんか?」
 きっちりと決められた間隔で侍女は尋ねてくる。そこでオネルヴァが少しだけと答えると、馬車が止まる。
 オネルヴァが疲れていないと答えても、一定の時間が経過すれば、やはり馬車は止まる。定期的に休憩をとるのが、馬車移動での常識のようだ。
 日が暮れる前に関所に着いたのは幸いだった。
 朝の早いうちにテシェバを出たせいだろう。オネルヴァは、ここでゼセール王国関係者へと引き渡される。
 だが、今日はここに泊る。宿泊用のテントもゼセール王国の者によって準備されていた。
「お預かりします」
 そう言って、オネルヴァの手を取った人物が、夫となる人物ではないということだけは理解した。目の前の彼は若い。
< 34 / 246 >

この作品をシェア

pagetop