初心な人質妻は愛に不器用なおっさん閣下に溺愛される、ときどき娘
「オネルヴァ・イドリアーナ・クレルー・キシュアスです。お世話になります」
「私は、閣下の側近を務めておりますミラーン・パシェクと申します。このたびは、おめでとうございます」
 深々と頭を下げた後、彼はオネルヴァの身の回りの世話をする侍女を紹介した。
 侍女はヘニーと名乗った。
「キシュアスのものをゼセールに持ち込むことはできません。ドレスも、こちらで準備したものを着ていただく必要があります」
 早速ヘニーによって、テントへと連れていかれたオネルヴァは身に着けているものを脱ぐようにと指示された。
 けして彼女は嫌がらせをしようとしているわけではない。彼女は彼女なりに仕事に誇りを持ち、伝統に則ってオネルヴァのドレスを脱がせようとしているのだ。
「あ、あの……」
 オネルヴァが声をかけると、ヘニーは不思議そうに眉根を寄せる。
「一人で、着替えられますから」
「オネルヴァ様は、奥様となられる方です」
 彼女の一言でオネルヴァは察する。ようは、一人でやってはいけないのだ。
「ですが……」
 オネルヴァは胸元をきつく握りしめる。このドレスを人前で脱ぎたくない理由がある。
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