初心な人質妻は愛に不器用なおっさん閣下に溺愛される、ときどき娘
 見てはいけないと思いつつも、彼女が慈愛に満ちた眼差しでエルシーに接しているため、つい目を離せない。
 その視線に気になったのか、オネルヴァはにっこりと微笑む。
「あ、お見苦しいものを……。失礼しました」
 エルシーをきちんと寝台に横たえたあと、オネルヴァはナイトドレスの中に膨らみをしまい込んだ。
「いや……」
 見苦しくはなかった。
 オネルヴァはエルシーに肩までしっかりと掛布をかける。
「旦那様は、先にお部屋にいかれますか?」
「いや……」
 オネルヴァに聞かれ、ついそう答えてしまった。もう一度、エルシーの隣で横になる。
「エルシーが目覚めたときに、俺たちがいないと寂しがるだろう?」
「そうですね。旦那様は、エルシーのことが大好きなのですね」
「そうだな……。家族だからな」
 エルシーはイグナーツのたった一人の家族である。血の繋がりのある者は、エルシーしかいない。
 オネルヴァからの視線を感じた。それから逃れるように目を閉じる。
 彼女ももう一度横になったようだ。シーツの擦れる音がした。
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