れんれんと恋するための30日


いよいよ拓巳の番だった。
拓巳は4番レーンだ。
クラウチングスタートのため、一斉に皆がひざまずく。

パン。

ピストルの音が大きく響いたと同時に、皆が前へ飛び出した。
それぞれのクラスで、一番足の速い男子の競争だ。
横一列に並んだまま、中々決着がつかない。
そんな時、拓巳が前に飛び出した。
一斉に青組の応援席が活気づく。

そんな興奮の渦の中、そのまま、拓巳は二位と大差をつけてゴールを切った。


「やった~~~」


福はその場で飛び跳ねて喜んだ。

拓巳、凄くカッコいいよ…
ねえ? 幸?
ちゃんと見てた?
幸の事が大好きな拓巳には、こんな一面があったんだよ…

そして、あっという間に、福の出番がきた。
福は、あり得ないほどに緊張している。
だって、こんな大舞台で、自分を試すことなんて初めてだから。

子供の頃、体が小さくて心臓が弱かった福は、緊張や興奮することをできる限り避けていた。
いつも、小さな鳥かごの中で、青くて大きな空を夢見る小鳥のようだった。
でも、今の私は丈夫な幸の心臓を借りて、この場所に立っている。

パパ、ママ、幸、見てる?
今から、福は一生懸命走るから、ちゃんと見てて…


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