れんれんと恋するための30日



「それで?」


福はバッグを持って帰ろうとしている道を追いかけながら、そう質問する。


「幸は欲張りだね」


「欲張り?」


「そ、自分の幸せだけじゃ物足りないって顔してるよ」


福は道のバッグを引っ張って、道の足を止めさせた。


「欲張りでいいじゃん。
私は透子さんにも幸せになってもらいたいだけ」


道は福を見て軽く笑った。


「透子の幸せが何なのか僕には分からないけど、僕は、今、幸せだよ。
透子が絵を描かせてくれてるからね。
フランスに発つ前に描き終わらせたいから、毎日透子には僕の絵につき合ってもらってる」


福はすごく嬉しかった。
毎日、透子は道とデートができている。
すると、福はいいことを考えついた。


「ミッチー、今度の日曜日に一緒に遊園地行こうよ。
私とれんれんは最初から行く予定なんだけど、ミッチーと透子さんもどう?

私、あとで透子さんも誘ってみる。
ミッチー、日本の高校生のデートしよ。
Wデートしてみたかったんだ」


道は苦笑いをした。
でも、たまにはいいのかもしれない。
ここ毎日、透子を自分の家のアトリエに閉じ込めているから…



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