君と笑い合えるとき
「ここでいい?」
心臓の音で,危うく聞き逃すほどだった。
え? と顔をあげれば,目の前には可愛い屋台と,カラフルなメニュー板。
こくんと頷いて,私はいちごのを選ぶ。
浴衣と同じいろ。
それだけで,安易に選んだ。
静流くんもまた,自分の浴衣に1番近い青色のものを選ぶ。
受け取った私は,お菓子の印象が近いからと,それを今後はわたがしと呼ぶことに決めた。
じっと見つめ,角度を見直し。
ぱくり,と横から口をつける。
じゅわりと広がる甘味,一瞬舌の上で固まり,消えていくふわふわ。
気を付けたのに,少し鼻先が本体に触れて。
シャボン液と同じ様に,拭ってもベタつきが残った。
久しぶりに食べたけど,多くは食べれないなと感じるほど,甘い。
子供の頃楽しかった食べ物は,幻想じゃなかったと今でも心を踊らせてくる。
次第に,隣が気になって。
こんな風に思う。
舌の上でじゅうっと溶けるこのわたがしの甘さは。
どの食べ物より,静流くんの甘さに似ていた。
話す言葉が見つからなくて,もくもくと食べる。
そしてようやく,静流くんも自分のかったわたがしを口にした。