君と笑い合えるとき
そう一歩近づいて,静流くんを瞳に映して。

どうしてそうしようと思ったのかは分からないけど。

だけど,きっと小さな出来心で。

なんだか悔しくて。

ほんとうに小さく,しゃふり。

青色のわたがしを口にした。

どうせ,気にしたりしない。

だから,静流くんからの反応は,やっぱりなかった。

呼吸1つ影響はない。

止まってしまったかのような静けさ。

目を向けると,怒ってもいない。

だからやっぱり,この行為も,なんとも思われていない。

怒られなくてよかったとだけ,私は心底ほっとする。

これは,なにも残念なことじゃない。



「手,ベタついちゃうから」



聞かれてもないのに,口にしない方がいい程小さな声で言い訳をしてしまうのは。

この恥ずかしい気持ちと,疚しい気持ちを見破られたくはないからだ。
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