ヒーローはかわいい天使さま
 ーーなんでどうして? 
 意味がわからなくてパニックだ。おどろいていると、「これ見て」と、目の前でスマホを見せられた。

「え。これって……私?」
 スマホ画面には、料理部で活動しているエプロン姿の自分がいた。

「俺の好きな子」
 碧維はスマホをさげると、少しはにかみながらも私をまっすぐ見つめた。

 近い。彼の瞳には顔が赤い自分が映っている。

「うそ!」
「うそじゃない」
「だって私、まだ碧維のヒーローになれていない!」
「は? ヒーロー?」

 碧維は眉根を寄せながら首を傾げる。

「髪だって、こんなくるくるだし、華恋先輩みたいにきれいじゃない!」
「俺、來実の髪、すごく好きだよ」

 前髪と額に触れながら、彼は愛しむようにほほえんだ。

「元気でふわふわで、かわいい。俺のヒーローは天使みたいだ」

 天使なのは碧維だ。破壊力最強の笑顔と言葉に、意識が薄れていく。

「……來実、息して!」

 無意識に息を止めていた。呼吸を再開すると、碧維は苦笑いを浮かべながら、ゆっくり私を解放した。

「危うく、天使を天に召すところだった」

 まだ信じられなくて、私は「ははっ」とから笑いをした。

「ぜんぜん、気づかなかった……」
「だから言ったろ。來実は鈍感だって」

 碧維は人をからかったりしない。本心で言ってくれているとわかるからこそ、悔しいやら嬉しいやらで、どんな顔をしたらいいかわからない。半泣きになると碧維があわてて「ごめん」とあやまってきた。

「俺、來実は朱翔が好きなんだとずっと思ってた。いつも朱翔のことを気にしていたから」
「気にするよ。朱翔くんは、お兄ちゃんだから」
「髪型は朱翔の好みに変えるし」
「碧維みたいな、さらさらの髪に憧れていただけだよ」
「あいつに彼女いるって知って、ショックを受けていたのに?」
「家族同然の人が遠く離れて行くようで、寂しかったの」
「俺のことはかわいいって言った」
「朱翔くんみたいに離れるくらいなら、強くならなくていい。かわいいままでいて欲しかったの」
 
 彼はじっと私を見た。

「そばを離れるわけないだろ。俺は來実を守るって決めているんだから。そのために強くなろうと思った。子どものころに約束したの忘れた?」
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