ヒーローはかわいい天使さま
「來実探しのために呼んだ。今は華恋先輩と一緒にいる」
「そっか」

 詰めていた息をほっと吐き出した。すると、顔をのぞき込まれた。

「本当に、朱翔のことはなんとも思ってない?」

 強く、何度も頷いた。

「家族と思ってる」
「朱翔だろうが、誰だろうが來実を渡したくない」

 とどめの一言を放って、碧維は電話に出た。

「朱翔? 來実なら見つかったよ。……うん、無事。今は南公園で雨宿りしてる。そう、……わかった、変わる」

「華恋先輩から」と言って、私にスマホを差し出した。すぐに受け取り耳にあてると、『來実ちゃん、ごめんなさい!』と先輩があやまってきた。

『私ったら、朱翔くんのことばかり考えてて、來実ちゃんへの配慮が足りなかったよね。私と碧維くんが家から出てきたらどう思うかなんて、考えればわかることなのに……。本当に、ごめんなさい!』

 今にも泣き出しそうな声だった。

「華恋先輩、事情は聞きました。私も先輩の立場だったら、同じことをしてると思います。好きな人のためになにかしてあげたい。その気持ちは、とてもわかるので」

 言いながら碧維を見て笑いかけた。

『私、朱翔くんが大好きなの。一筋だから!』
「はい。私も、碧維一筋です。華恋先輩、朱翔くんと、幸せになってくださいね」
『幸せになるのは來実ちゃんもだからね!』

 先輩の言葉が胸をあたたかくする。「はい」と頷いた。

「今から車で迎えに来てくれるって」

 通話を切り、スマホを返すと手を握られた。

「俺だって、來実一筋だけど」

 まっすぐな瞳と、気持ちがこもった言葉に胸が高鳴った。

「一人で思い込んで、突っ走るのに?」
「いいよ。また追いかけるから」

 ふわりと笑う碧維の肩に両手を置くと、私はそっと、彼の頬にキスを落とした。

 顔をのぞき見ると真っ赤だ。あまり見たことのない表情と反応が嬉しくて、胸の奥から次々に愛しさが溢れてくる。見つめていると「やっぱり、ヒーローには敵わない」と返ってきた。
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