天才パイロットは交際0日の新妻に狡猾な溺愛を刻む
 最後にいつも通りの情報を伝えると、再び砂嵐のような音が聞こえてくる。

『……clear. HA479.』

 耳を澄ませると、雑音に交ざって確かに声が聞こえたので目を見開いた。送信機能を取り戻したの?

 次いで、モニターには待ち焦がれていたナビゲーションライトの灯りが映る。ようやくこの目で見られる安堵と、同じくらいの不安でいっぱいになる。

 どうか、機体が破損していたり、火が出ていたりしませんように。このタイミングでドローンが出てきて衝突したりしませんように……!

 無意識に胸の前で手を組み、ひたすら祈る。心臓の音がうるさい。

 着陸態勢に入った機体には、こちらから見る限り異常はない。強風の時も多い八丈島だが、今日はそれほど強くないのが不幸中の幸いだ。

 滑走路まであと百メートルほどかというところで、雲の切れ間から光が差し込む。慎重に近づいた地面にランディングギアが接地し、上がる水しぶきとエメラルドグリーンの機体が輝く。

 神々しささえ感じるその光景に、安堵と感動が込み上げて目頭が熱くなった。

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