天才パイロットは交際0日の新妻に狡猾な溺愛を刻む
 赤くなっているだろう顔を俯かせる私の耳が、「ますます暁月パパをなんとかしないとな」という城戸さんの呟きをキャッチする。目線を上げると、彼はいつも通りの笑みを浮かべていた。



 翌日、暁月さんは無線の修理が終わり次第、同じ機体に乗って帰ってくることになった。部品を調達するのにも時間がかかったようで、羽田に到着したのは午後三時頃。

 早番で四時に仕事を終えた私は、暁月さんと待ち合わせをしている。彼も今日はこのまま仕事を終え、明日からまたフライトになるらしいので、早く会って少しでも一緒にいたい。

 ターミナルビル一階を足早に進んでいくと、ベンチに座っている暁月さんを発見した。座っているだけで輝いているように見えるのは私だけだろうか。

「暁月さん!」

 気持ちが急いて名前を呼ぶと、彼が顔を上げてふわりと笑みを見せた。まるで初恋みたいに胸がときめいて、すぐそこにいるのに触れ合うまでの距離すらもどかしい。

 しかし、彼を目前にしたところで手に持っていたスマホのバイブが鳴り、反射的に足を止めた。

「あ」

 着信の相手の名前を見て声を漏らす私の隣に、腰を上げた暁月さんがやってくる。彼にディスプレイを見せると、げんなりした顔になった。

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