不埒な上司と一夜で恋は生まれません
朝、カンカンカン、と軽やかに階段を上がってくる音がした。
次に、
「うわっ」
と男の驚いた声が聞こえる。
「どうしたっ!?」
玄関前にしゃがんで寝ている自分に驚いて声を上げたのは、隣の部屋の住人、羽積宗高だった。
三階の奥さんが、
『羽積さんって、イケメンだけど。
なんの仕事をしているのか、よくわからない人よね。
朝帰りが多いし、筋肉質だから。
ガードマンか、土木工事の人か、バンドマンかしら?』
とか、いつも言っている。
だが、そのどれなのか、本人に確かめたことはないようだった。
その羽積に、
「なにやってんだ?」
と問われ、和香は、
「いや~、ちょっと閉め出されちゃいまして」
と苦笑いして答える。
羽積は手入れなどしそうもないのに、キリッと整った眉をひそめて言った。
「一人暮らしなのにか……」