不埒な上司と一夜で恋は生まれません
「あの、鍵……」

「やはりお前のか」
と耀は赤いリンゴのキーホルダーのついた鍵を和香の前にぶら下げる。

「あっ、ありがとうございますっ」

 天竺への階段が今ここにっ! と、和香は(うやうや)しくそれを受け取る。

 今日こそ、ふかふかの布団に潜り込んで寝よう、と思っていた。

 冷たいコンクリートにしゃがんで寝たせいで、まだお尻が痛かった。

「視線で来いと言っても通じないから、昨夜のあれは夢だったのかと思ったぞ」

「ああ、すみません。
 いやでも、そもそも、私、用もないのに課長を見つめませんから」

 その言葉に、何故か、耀の機嫌が悪くなる。
< 21 / 438 >

この作品をシェア

pagetop