不埒な上司と一夜で恋は生まれません



 なんとなく会話が噛み合わないまま、アパートまで送ってもらった。

 課長の車の助手席とか、緊張するな、と落ち着かない和香に耀が言う。

「呑んでもよかったんだぞ」

「え?」

「俺に遠慮して呑まなかったんだろ。

 今度は呑め。
 揚げたて熱々のトンカツには、やっぱりビールだろ」

 今度があるのだろうかな、と思いながら、和香は、

「では、今度は私がおごりますので。
 課長も呑んでください」

 二人で歩いていきましょう、トンカツ屋、と言って笑った。

「そうか。
 まあ、うちから歩いて行けば近いかな。

 うちまでは一緒に車で帰ってもいいし。
 お前が待ってるのが嫌なら、先に帰って、うちで待っててもいいしな」

「……玄関でしゃがんで待ってるんですか? 私」

 寒いですよ、と思いながら和香は言ったが、

「大丈夫だ。
 お前の指紋も登録しておく」
と耀は言う。
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