不埒な上司と一夜で恋は生まれません
「いや、嫌いではないんだが……」
と耀は言葉を濁す。

 呑み会のあとで、意識のなかった耀を思い出し、和香は思った。

 まあ、好き嫌いと体質的に合うかどうかは、また、別の話だよな、と。

「大丈夫ですよ。
 酔ったら、またお運びしますから」
と言って和香が笑うと、

「言っておくが、俺も、一、二杯じゃ酔わないからなっ」
と耀は言い返してくる。

 その様子が、会社ではありえないことだが、可愛らしく感じられ、はいはい、と和香は適当な相槌を打って流した。

 なにがいいかな。
 木の葉どんぶりだからな。

 やっぱ、日本酒かな?
と思う和香の横で、

「ほんとうだぞ。
 意識はあるんだ。

 ぼんやりしてるだけで」

 また、はいはい、と言いながら、和香はガラガラと戸を開け、うどんとどんぶりの店に入った。



< 47 / 438 >

この作品をシェア

pagetop