「世紀の悪女」と名高い侯爵令嬢がクズ皇太子に尽くし続けた結果、理不尽にも婚約破棄されたのですべてを悟って今後は思うままに生きることにする~手始めに隣国で手腕を発揮してみるけど文句ある?~
 つい先程クストディオの肩にやさしく置いていたと同じ手は、今度はそのおなじ肩を殴っていた。しかも拳にして。

「いたたた」

 クストディオは、上半身を折ってうめき始めた。

 大げさすぎるわよ。

「フェリペ、このバカの言葉を真に受けないで。わたしが悪女っぷりを発揮するのは、敵だけ。味方にはそんなことないし、ましてや可愛いあなたを『食う』、だなんてことしないから。たぶん、だけど」

 なぜか言い訳がましくなっていた。

 エドムンド、それからクストディオが笑い始めると、わたしも笑わずにはいられない。

 ただ一人、フェリペだけは可愛い顔をキョトンとさせていた。
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