ヴァンパイアガールズ
美海に聞き変えようとしたとき,ハルが言う。



「……浅海,あの人のこと気になるの?」

「え?」



そんなにおかしな事だったのだろうか。

人間の中に,一際目立つ存在がいる。

それに興味を示すのは,ヴァンパイアとしても人間としてもまちがっていないはず。

なのにハルは,どこか歯切れの悪い顔をしていた。



「特待生」



美海が呟くような口調で言う。

私の視線は自然と,美海を向いた。



「綺麗で,頭のいい人間の特待生。多分,ハルと同じくらい。運動は,特待生の勝ち。ちなみにあの人,誰にも吸血させてくれない,どんな質の悪い先輩も,すぐ逃げられるって」



そんなことあり得るの? と,今すぐ私と彼を入れ替えて欲しいと思う。

ヴァンパイアと並び,運動でも出来る方のヴァンパイアを越えるなんて。

それに,逃げられるとは?

仕掛けられた攻撃を,かわすって意味なんだと思う。

見境ないのないヴァンパイアは,本当に全力で口をあけてくるのに。



「名前,確か……走り(はしり) ちはや。ひらがないっぱい,珍しい名字。字面だけだと,どっちか分からないってせんせいがぼやいてた気がするの」




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