ヴァンパイアガールズ


走りちはや。

もう顔を合わせることはないかもしれないのに,私はわざわざ記憶するような事をした。

なぜ頭で反芻してしまったのか,私はそう思いながら踵を返す。

……そう言えば……

あの綺麗な顔と柔らかくも固くもなさそうな黒髪。



「シュウに,ちょっと似てる。一筋縄じゃ行かなそうな,生意気で冷たそうな顔」

「……まさか。俺の親は2人とも,いくつ遡ってもヴァンパイア。同い年の人間なんて,いるわけないだろ」

「似てるってだけで,誰も血縁の話なんて…」

「ほら2人とも早く。アイスのごみより遅刻したときの方が切り刻まれるよ」

「えっそれはいや」



だって命に関わるから。

やんわりと何かを隠すようなハルに気付きながらも,私は走った。

そう言えば,シュウもちょっと変だった。

浮気の婚外子や,人間とヴァンパイア両方を受け継ぐような,存在しないはずのものを語るのに似ていた。

……まさかね。

シュウはシュウで,走りちはやは,ただの人間だ。
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