ヴァンパイアガールズ
これを,授業でやる理由がよく分かる。

教師の解説を聞きながら,その切なさに胸を痛めた。

ヴァンパイアはヴァンパイア同士,素敵な恋をして,結婚して。

互いを深く愛しましょう。

出来る限り精一杯幸せに生き抜いて,満足したならそこでさっくり立ち去りましょう。

その先にも幸せはあります。

そんな,ヴァンパイアの道徳,メッセージだった。

繋ぎながらも,剪定し。

人工調整の為の,理由付けの物語。

もしこれが,ヴァンパイアしか存在しない世界での物語なら。

きっと,どんな恋愛にも勝る,幸せで泣ける物語だったかもしれない。

けれど……

この世界には,人間がいる。

それを思い出せば,酷く差別的で,窮屈な物語だった。

女のヴァンパイアが男を翻弄するのは,良くある話。

けれど,最初に惚れるのが男のヴァンパイアで,とても一直線で。

どこまでも,彼の目線でしか書かれていないのが胸に引っ掛かった。




『僕の愛するヴァンパイア』



本当に愛するヴァンパイアを見つけたのは,どんな環境下であっても幸せなこと。

だけど……それはただ彼の運が少し良かっただけで。

そもそも彼は最初から,ヴァンパイアである彼女のことしか,愛する権利を持っていなかった。

もし愛した彼女がヴァンパイアでなかったなら,どうなったんだろう。

逆の立場なら,きっと花嫁は両親に許しを乞うて。

子供は多少肩身の狭い思いをするけど,人間だろうとヴァンパイアだろうときっと家族で幸せになれる。

だけど,花婿の立場なら……人間の花嫁を貰うことは,絶対になかった。

人間と,ヴァンパイア。

許容されること,許されないこと。

許容される方,許されない方。

許しがわざわざ必要なこと。

ヴァンパイアにとっての美徳とされること。

片方に厳しく,両方をも縛るヴァンパイアの思想は,つくづく。

……私には,合わない。

外で音がした。

目を向けると,ちはやがいる。
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