幼なじみ、じゃない。


たす、かった……。



「………、あれ」


「っ羽衣、大丈夫?」



急に体の力がふっと抜けてしまって、涼のもとに倒れ込む。


ふわり、柔らかくて安心する涼の香りがした。

それにまた泣きそうになってくる。



「うん、だいじょうぶ……助けてくれてありがとう」


「急にいなくなってたから、めちゃくちゃ心配した……」


「……ごめん」


「んーん」



ぎゅっと抱き締められて「よかった……」という呟きがすぐそばで聞こえた。



「……っ」



苦しいくらい、だけど嬉しく思う私はまだ完全に失恋できてない。




耳元にかけられる吐息がくすぐったい。


心臓が大きく跳ねたことが、涼に伝わってしまいそう。


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