赤と黒に溶ける

 あーあ。今年の夏祭りは、人生でいちばん最悪。

 浴衣の袖で涙を拭いて、割れてしまったヨーヨーの破片に手を伸ばす。そのとき。

「あーあ。なにしてんだよ」

 頭上からふってきた声に顔をあげると、なぜかそこには、呆れ顔で私を見下ろす佑くんがいた。

「な、んで……?」

「なんで、ってなに? ていうか、どこ行くの? 花火、これからだけど」

 そんなふうに話す佑くんの声は、なんだかちょっと不機嫌そう。

 どうして、私が怒られなきゃいけないの……。

 先に置いてけぼりにしたのは佑くんじゃん。

 無言でふいっと下を向くと、佑くんがため息を吐きながら、私の前にすとんと腰を落とす。

 佑くんは、なんで、今さら私に構いに来たんだろう。

 花火が見たいなら、私のことなんてほっといて、さっきの子と見てくればいいのに。

『夏祭りの花火を好きな人とふたりで見ると、永遠に結ばれる』

 あの子とふたりで花火を見たら、佑くんはあの子のものになっちゃうのかな……。

 想像しただけで、胸がきゅーっと痛くなる。
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