赤と黒に溶ける
もしかしたら佑くんは、あの子と一緒にお祭りに来たほうが楽しかったんじゃないかな。
私は、あの子みたいに大人っぽくもないし、美人じゃないし。ヨーヨー釣りでワガママ言うし。佑くんとはぐれて不貞腐れるし。
手がかかって面倒なだけ。
それでも、佑くんが今年の夏祭りに私を誘ってくれたのは、『好き』だからとかそういう甘い理由じゃなくて、お祭りに私を連れて行くことが毎年の『習慣』だから。
私とお祭りに来ることは、佑くんにとってはたぶん、『義務』みたいなものだったんだ――。
それに気付いてしまうと悲しくて。勝手に勘違いしていた自分が恥ずかしくて……。
私は佑くんと、その隣にいる彼女に背を向けた。
もう、帰ろう……。
焼きそばの屋台に並ぶ佑くんは、私とはぐれてもなんとも思っていないみたいだったし。
私が先に帰っても、どうせいつものワガママだって思われるだけだろう。
それに、私がいたってどうせ邪魔なだけ……。
牡丹柄の浴衣の女の子の隣で照れていた佑くんの顔が思い浮かんで、また胸が苦しくなる。