― 伝わりますか ―
 ──そして右京と秋の二人は──。
 
 暫く無束院に留まった後、葉隠の山里を目指した。

 右京は悠仁采を尊び、姓を佐伯と改め、秋も又、秋穂と名を変えた。

 一男一女に恵まれ、我が子のみならず身寄りのない子を預かり、小さな寺子屋で文武を教えた。その中には葉隠忍者の末裔になった者もいるという。



 伝わりますか? 私はいつまでもお待ち申し上げております。

 あなた様が天へ昇られます、その時まで──。



 ──伝わりますか──



      【完】



■弥藤多は少年忍者 暎己(うつせみ)の、忍びでない時の名前です。


■お気付きにならない方も多いと思いますので・・・今話の以下の文章は【壱】の第一話後半の文章とリンクしております。

 >彼女の頬を優しく撫でてやる。熱を保ち、凍ってしまった涙を溶かしてくれるそんな手。

 >胸の中で包んでもらう。温かな手を持った人の胸はどれほど温かであろうか。


■余計なお世話かと思いますが、月葉の最後の二年が何故幸せだったのか・・・それは嫁いだ主の声が悠仁采のそれに似ていたからでした。瞳を閉じれば彼女の目の前にはいつも悠仁采が居て、微笑むことも従順でいることも出来ました。そのために言葉は話さずとも、主の寵愛を受けられたものと思われます。



◆最後までのお目通しを、誠に有難うございました。 朧 月夜 拝



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