悪役令嬢は王子との秘密の双子を育てています 〜見つかったので処刑されるかと思いましたが、なぜか溺愛されました〜

「そのようなお顔もメリアン様にお見せすればいいのに」
「そんなカッコ悪いことが出来るか。」
「殿下はメリアン様の前では必要以上にカッコつけてしまいますものね。」
「そんなことはないつもりだが、どうしてもメリアンの前ではうまく出来ぬ。」
「それは愛故の悩みでございますね。」

 エリオットは微笑んで言った。王子はエリオットの言葉にふと考え込んだ。

 二歳年下のメリアンのことは、十一歳の時中庭で初めて会った時から可愛いと思った。
 恥ずかしそうに隠す赤髪はまるで紅葉のように美しく、金色の大きな瞳は星屑が散りばめられたように光り、大人ばかりの王宮で育った彼にとって、こんなに純粋で、愛くるしい人間がこの世に存在するのかと衝撃を受けた。
 それどころか、メリアンは年を重ねるにつれどんどんと美しくなっていき、周りのメリアンを見る目も、色っぽいものになっていく。
 国王である祖父や王太子である父、に懇願し、メリアンとの婚約を取り付けたのは、王宮だけではなく、王国の者みなに、メリアンは自分のものだと分からせたかったからだ。

 王子の独占欲など露知らず、メリアンは無邪気な子犬のようにただ一途に自分を追いかけてくれた。だからこそ、余計にメリアンの前では常に余裕ぶりたくて、年上で、大人っぽい自分を演出してしまう。
 自分のせいで感情を揺らすメリアンがどうしようもなく可愛かった。少しでも優しくすれば、世界一幸せな人間のように喜び、少しでも冷たい態度を取れば、この世の終わりのような顔をする。
 メリアンは何をしても自分のことが好きで、いつまでも自分の傍にいるだろうと高を括っていた。そんな幼稚な自分を思い出した。

 そのせいで、メリアンを、あんなふうに悲しませ、傷つけ、自暴自棄にさせてしまったことを、メリアンが去ってから後悔しない日はなかった。けれど、だからといって、今更どうメリアンと接すればよいのだろうか。変わりたいと思っても、そう簡単に変わることは難しい。
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