悪役令嬢は王子との秘密の双子を育てています 〜見つかったので処刑されるかと思いましたが、なぜか溺愛されました〜

「愛故の悩みか・・・」
「はい、愛する人の前では、自分自身を見失ってしまうことがあるのはよくあることでございます」

 エリオットは優しく微笑んで、王子を慰めた。

「殿下も、メリアン様と同じく眠れない夜になりそうですね」
「それは困る。三人と会ってから、もう三日もろくに寝ていないのだ」
「宿でも私たちに任せておけばよいのにずっとドアの前で見張っていらっしゃいましたものね」
「ああ、ここに帰ってくるまでは、いつまた逃げ出さないか、ずっと不安だったからな。でも今日はお前たちに任せ、ちゃんと眠ることにする。明日は子供たちに精霊魔法を教えると約束したからな」

 こんな生き生きとした王子を見るのは久しぶりだったエリオットは感極まって涙が出そうなのを、誇り高き王家の騎士としてこらえながら、主を寝室まで送り届けた。

 王子が寝室に入った後、エリオットは部屋の前で立ち止まり、ここ数年のことを思い返していた。彼は長年、フェルディナンド王子を見守ってきた故に、メリアンとの関係についてはよく知っていた。メリアンが去った後、王子は心を閉ざし、周りの人々から遠ざかっていくようになってしまった。六年もの間、メリアンを探し続け、一度たりとも諦めず、執念で見つけ出した王子の思いは本物だ。

 そして、今の王子の姿を見ると、メリアンがいなくなったことが彼にどのような影響を与えたのかを痛感する。

 フェルディナンド様、どうか今度は愛を手放さぬように・・・、エリオットはそう願いながら、王子の寝室の前を去った。

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