悪役令嬢は王子との秘密の双子を育てています 〜見つかったので処刑されるかと思いましたが、なぜか溺愛されました〜

クッキー

 王都に戻り、王宮に連れられて来た当初はどこへいっても何をやっても、メリアンは子供たちについていることが多かった。とくに、魔法を使ったり、何か危険なことが伴うかもしれない場合、自分がいなければ不安だった。けれど、双子とフェルディナンド王子、そしてメリアンとフェルディナンド王子の関係が深まることで、メリアンも彼や、彼の従者に安心して子供たちを任せることができるようになっていた。

 フェルディナンド王子と子供たちが馬術の訓練を楽しむ間、メリアンは厨房を借りて子供たちが喜ぶだろう三人暮らしをしていた時によく作っていたクッキーを焼いていた。様々な形や味のクッキー。きっと子供たちも喜んでくれるだろう。

 訓練が終わるころ、メリアンはバスケットにたくさんのクッキーを詰めて、フェルディナンド王子と子供たちのもとへと向かった。彼らは汗ばんだ顔で、楽しそうに笑いながら話している。どんな話をしているのだろう。メリアンがいない子供たちは、違う一面を見せるのだろうか。メリアンはそんなことを考えながら、彼らの姿を見て楽しくなった。

 子供たちの名前を呼ぶと、メリアンに気づいた子供たちは手を振った。それに応えるように「おやつの時間よ。」とメリアンは伝える。
 メリアンの元に駆け寄って来た二人にバスケットの中を見せると、二人とも大喜びでクッキーを手に取った。彼らはまるで宝石が詰まった宝石箱を見るように目を輝かせ、お気に入りの形を選んでいた。王子も双子の後ろでその様子を見ていた。バスケットの中には、星やハート、馬の形にくり抜いたクッキーがある。

「厨房でよく菓子作りに励んでいると聞いていたが、随分と腕があがったようだな。」

 王子は過去に一度、王子のためにクッキーを作ったメリアンを思い出していた。
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