悪役令嬢は王子との秘密の双子を育てています 〜見つかったので処刑されるかと思いましたが、なぜか溺愛されました〜

 フェルディナンド王子とメリアンは、大聖堂から宮殿のボールルームへ向かうために、白い馬に引かれた豪華な馬車に乗り込んだ。馬車は金色の装飾が施され、車輪や馬具も細かい彫刻が施されており、煌びやかな存在感を放っていた。
 馬車が大聖堂を出発すると、沿道には多くの国民たちが集まっており、フェルディナンド王子とメリアンを祝福する声が響く。国民たちは花びらを投げ、二人に対する祝福の気持ちを表現していた。空には色とりどりの紙風船が舞い上がり、幸せの象徴として青空を彩っていた。
 宮殿の門をくぐり、広大な庭園を抜ける。
 馬車はボールルームの前に停まり、フェルディナンド王子は降りる前にメリアンに優しく手を差し伸べた。メリアンは王子の手を握り、馬車から降り、二人はボールルームへと入った。

 シャンデリアが輝くボールルームでは、楽団が美しい音楽を奏でており、床には絢爛な絨毯が敷かれ、壁には絵画や花の装飾が施されていた。フェルディナンド王子とメリアンが入場すると、招待客たちは彼らを温かい拍手で迎えた。王子とメリアンは感謝の気持ちを込めて丁寧なお辞儀をし、ダンスタイムが始まり、皆が華やかに舞い踊った。

 六年半前のあの日、この場所で、婚約破棄をされると思っていたメリアン。六年半後、まさか同じ場所で結婚することになるなんて、思わなかった。

 自分の前世の記憶がなければ、今の幸せを手にすることができたのかどうか、深く考えた。フェルディナンド王子とエレオノーラと結ばれることが無い未来で、そのまま婚約者であった自分と結婚したとしても、もしかしたらお互いに素直になれないまま傷つけ合うだけの夫婦になっていたかもしれない。もちろん、フェルディナンド王子が他の人と結婚する未来もあったかもしれない。そして何よりも、前世の記憶がなければ、もちろんルカやリリスを身籠ることも無かった。

 前世の記憶があったからこそ、今のメリアンがいる。信じられないほどの経験と努力を経て、新たな人生を歩んだ。そして、その道のりで、彼女はフェルディナンド王子と再び出会い、今ある幸せと真実の愛を見つけることができた。

 全てが必然であり運命であった。
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