初めての恋はあなたとしたい
翌朝。
昨日うどんを食べからかここ数日の中では体調がいい。
望月さんから休んでもいいとメッセージをもらったが、復調したから、と返信し出勤した。
お昼の便で拓巳くんが空港に到着する。
すでにマスコミ関係の記者たちが、どこから情報を入手するのかスタンバイしていた。
空港での混乱を防ぐため、私たち広報も出向き、対応に追われていた。
記事を読んだところ、女優さんはクウォーターで祖父が日本人。見た目は日本人の血が入っているとは思えないほどだが、祖父の影響から日本文化に精通しているそう。最近有名な映画祭で助演女優賞を獲得し、次の映画も決まっている今を輝くスターのような人だった。
滑走路にプライベートジェットが到着すると拓巳くんが出てくるのをまだかまだかとざわつき始める。
裏口から出るのは可能だが、拓巳くんはそんなことはしないだろう。
20分を経過したところで到着ゲートから彼が姿を現した。

「あの女優さんとのご関係は?」
「どのような仲ですか?」
「お付き合いはされているんでしょうか?」

矢継ぎ早に質問が飛び交い、写真を撮られていく。
空港にいるお客様も何事かと驚き、拓巳くんは注目を浴びていた。

「わざわざお越しくださりありがとうございます。週刊誌に書かれた記事ですが、事実無根です」

はっきりとした口調で誤報道であると説明する声が聞こえてきた。

「でもこれまで何度も一緒にいるところを撮られてますよね?」

記者たちは引き下がらず、かえって彼が立ち止まり口を開いたことでもっと情報が得られるのでないかと食いつくように質問を重ねた。
私たちは警備員と共にこれ以上彼に近づかないようガードしていた。

「私には今、口説いている途中の大切な人がいます。その人に誤解されたくない。写真に撮られたマリアはホームステイでお世話になっていた家の娘さんです。その縁もあって今度当社のキャンペーンモデルをしてもらうため何度かお会いしています。他のスタッフもいて決して2人きりではありません」

記者らに向けての説明のはずだが、なぜか視線は私と絡まり合う。
私も彼の視線から目が離せずにいた。

「私が心から大切にしたい人に心配をかけたくない。どうかこれ以上誤った情報を流さずにいただきたい」

彼が悪いわけでもないのに頭を下げている姿は見ていて誠意を感じた。

「では副社長がお付き合いされたい方はどんな素敵な方なんでしょうか」

ここまで彼が言ったことで相手のことに興味が湧いてしまったのだろう。この質問に他の記者も食い入るように返答を待っていた。

「まだ口説いている途中なんです。相手があることなのでどうか静かに見守っていていただけますか」

また頭を下げ、ここまでだと悟ったのか副社長が足を踏み出すと記者も散会していった。
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