初めての恋はあなたとしたい
「遅くなる前に帰るか?」

え、もうそんな時間?
確かにもう日が暮れ始めている。ここから帰るとなるとそろそろ出なければならないだろう。
すぐに答えを返せずにいるとふわりと私は抱き寄せられた。

「このまま帰さなくていい?」

耳元で聞こえた彼の声。
甘く痺れるような誘惑に私は小さく頷いた。

「まだ一緒にいたい」

「俺もだ」

彼は私の手を引き、車へ戻るとすぐに唇を合わせてきた。啄むように何度も形を変えて触れてくる。

「ダメだな。また我慢ができなくなる」

彼のマンションでしたキスとは違い、すぐに離れてしまったのを寂しく感じる。けれど、彼に求められていると思うだけで胸の奥がギュッと掴まれたように苦しくなる。

「行こうか」

どこに行くのか分からないままに拓巳くんは車を発進させてしまう。
冬の日暮れは早い。
あっという間にあたりは真っ暗になってしまった。
こんな時、何を話したらいいのか分からず、拓巳くんも話しかけてこないので私は押し黙ったまま。
20分くらい乗っていたのだろうか。
白樺がライトアップされたゲートを抜けるとホテルの前に車がつけられた。
すぐにドアマンがやってきて助手席のドアを開けてくれた。
私が降りると拓巳くんは回り込んできており、ドアマンに車のキーを渡していた。
私の手を取りフロントへ行くと何も手続きする様子はなく、カードキーを渡された。

「行こうか」

私の手を取ると、ホテルに詳しいのか迷わずエレベーターへ向かって歩き出した。
最上階のボタンを押すとあっという間に到着してしまう。
そのままぐいぐいと手を引かれ重厚なダークブラウンのドアにあるセンサーにカードキーをかざすとカチャと開錠された音が響く。
そのまま部屋の中へと連れて来られるが拓巳くんは押し黙ったまま。
部屋の中央には応接セットが置かれており、私はそこに座らされた。
彼は私の前に膝をつくと両手を包み込まれ、下から見上げられるように私と視線を合わす。

「美花。俺はもう妹だと思っていない。今の関係を変えたいし、もっと先に進みたい。美花を大切に思っているし、なによりも幸せにしたい。だから……」

最後の言葉はなぜか消え入るように小さくなった。ううん。最後まで言葉を紡げなかったのかもしれない。

「新しい関係になりたい。私は拓巳くんの1番になりたい。もう自分を卑下したり卑屈になりたくない。拓巳くんのものだと実感させて」

私の言葉を聞くと拓巳くんははにかむように笑う。

「ありがとう」

包み込まれた手を引かれ、バランスを崩した方思った瞬間にはもう彼に抱きしめられていた。
そのまま私の顎を捉え、軽く上を向かされると唇を重ねてきた。

「口を開けて」

え? と思った瞬間にはもう彼の舌が私の中に侵入してきた。
絡まり合い、卑猥な音が聞こえてくる。
この前のキスとも、さっきのキスとも違う大人のキスの始まりだった。
息が苦しくなる。
この前彼に言われた通り合間で呼吸をするが慣れない私は上手くできない。
そんな様子を見て「可愛いな」と唇ではないところへと彼の唇は移動していった。
額から目尻へ、耳元から首筋へと降りていく。
私の息が整うのを待つと彼に抱き上げられ、ベッドルームに運ばれてしまう。
そっとベッドの上に下ろされると彼は私にまたがり、ジャケットを脱ぎ始めた。その下に着ていたシャツのボタンも手早く外すと脱ぎ捨てる。
その姿を下から見上げ、喉の奥がギュッと締め付けられゾクゾクとしてしまう。拓巳くんの今までとは違った男を感じた。
拓巳くんはあっという間に上半身裸になってしまった。見たことのない彼の裸に目線をさまよわせてしまうと拓巳くんは私の顔を包み込み、また唇を落としてきた。

「美花……」

切なく耳元に聞こえてくる彼の声にお腹の奥がキュンとした。
着てきたニットワンピースをたくし上げられ、あっという間に下着姿にされてしまう。彼は私の足元へ行くと履いていたタイツもするりと脱がされ、ベッドの下に投げていた。そのまま私の足を手にし唇を這わせ、ビクッとした。

「た、拓巳くん。汚いよ」

「汚くない。美花の全部を知りたいんだ」

私は恥ずかしくなり落ち着かない。もぞもぞしてしまうとまた上へと戻ってきた拓巳くんは私の胸に手を当てる。

「心臓が壊れそうだな」

「うん」

「大丈夫。怖くない。優しくするから安心して」

心臓の音を確認していたのかと思っていたのにそのまま彼の手の中で優しく揉みしだかれ始めた。

「あぁ……ん」

思わず出てしまった声に拓巳くんはビクッとした。でもそれを合図にますます私の胸を翻弄し始める。
気がつくとホックは外され、直に触られていた。
彼はひたすら優しく、私を包み込むように抱いてくれた。
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