初めての恋はあなたとしたい
家に入ると両親が揃っていた。

「あら、拓巳くん久しぶりね」

母の呑気な声にホッとしてしまう。
父も拓巳くんはよく家に来ていたし、今は私たちの上司でもあるので特に険悪な雰囲気はない。

「ご無沙汰してます」

「ほらほら、座って。何だか大人になっちゃって」

父と向かい合わせのソファに促される。
私は自然と拓巳くんの隣、オットマンにはお兄ちゃんが座っていた。
母はお茶を入れにキッチンに行ってしまった。

「今日はご報告をさせていただきたく寄らせていただきました。美花さんとお付き合いをさせていただいています。もちろん将来的なことも考えています。お許し頂けますか?」

お兄ちゃんは両親にきちんと伝えて欲しくて待っていたのだろう。でも拓巳くんもそのつもりだったのではないか。
父は驚き言葉が出てこなかったが、キッチンから戻ってきた母が「キャーッ」と喜びの声を上げた。

「拓巳くん、本当なの?」

「はい。きちんとお付き合いさせていただきます」

はっきり言い切る彼の姿にまた胸が熱くなった。

「君のことは昔から知っているから安心だと思う反面、君の立場を考えると美花には気が重いのではないかと思うんだ。親は子供に苦労をかけさせたくないと思うものなんだよ」

冷静に言う父の言葉は私にもよくわかる。今の立場もだが、これからさらにかかる責任も大きなものになるだろう。彼の負担をなくしてあげられるようなバックボーンも我が家にはない。私自身にも支えるだけの能力はない。

「私は美花さんがそばにいてくれるだけでいいんです。彼女の存在が私を強くさせてくれる。普段のしかかる重圧を和らげてくれるんです」

「それだけでは拓巳くんのそばにいるのは正直難しいんじゃないか?」

父は納得できないのか表情が硬い。
お兄ちゃんはただ座っているだけで口を挟まない。

「色々と付き合いが出てしまうかもしれないです。でもそれは私が全力で守ります。美花さんを泣かせるような真似はしません」

拓巳くんの言葉を聞くたびにジーンと胸が熱くなる。気がつくと目尻から涙がポロリと落ちていた。

「おい、もう泣かせてるぞ」

お兄ちゃんが突然私を指差した。

「これは違うの! 嬉しくて」

拓巳くんはポケットからハンカチを出すと私の涙を拭いてくれる。

「そばでこうして彼女を大切にします。よろしくお願いします」

拓巳くんはソファから立ち上がると頭を深く下げた。私もハンカチで目元を押さえると立ち上がり頭を下げる。

「まぁまぁ、お父さん。拓巳くんだもの。安心じゃない」

「うむ……。反対したいわけじゃないんだ。ただ、美花が心配で」

「俺は賛成。拓巳は昔から美花を可愛がってた。拓巳が美花を好きになってるって気が付いてた。昨日今日の話じゃない。覚悟が決まったってことだろ?」

お兄ちゃんはどこか偉そうに拓巳くんの肩を叩いていた。

「私も賛成よ」

「お母さん……」

また涙がこぼれ落ちてしまった。

「美花は拓巳くんがいいのか?」

父の言葉に私は何度も頷いた。

「わかった。拓巳くん、よろしくお願いします」

父も立ち上がると拓巳くんに頭を下げていた。
涙が止まらなくなり、拓巳くんが心配して私の頭を抱えるように抱きしめてくれた。
両親の前で恥ずかしい。でも堂々と私に触れる拓巳くんがますます頼もしく感じた。
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