【電子書籍化】最初で最後の一夜だったのに、狼公爵様の一途な愛に蕩かされました
 弟妹の登場により、グレンが立ち上がる。
 彼が手を差し伸べてくれたから、ルイスはその手を取り、腰をあげた。
 彼らが言うには、屋敷から姿を消したルイスを心配し、三人で探していたそうだ。
 三人揃って屋敷を出て、ミリィとクラークはルイスの匂いを辿ろうとしたのだが、グレンだけは迷うことなく走り出し。
 彼らの中で最も上背があり、足も長いグレンは、弟妹の前から姿を消した。
 ミリィとクラークは、グレンとルイス、両者の匂いを辿ってここまで来たのだ。

 グレンが、ミリィとクラークよりも先にルイスを見つけることができたのは。
 彼が迷うことなく、ルイスの元まで一直線だったのは。

「……つがい、だから?」

 ルイスの声が震え、その緑の瞳からは、再び雫がこぼれる。
 番であると信じ込ませるために、彼らが嘘をついているとは思えなかった。
 彼らの話通りなら、グレンが一番に到着できた理由は、自分が彼の番だからだ。

「っ……う、ううっ……。グレン、さま……!」

 せきをきったように、わあわあと。
 声をあげて泣き出したルイスは、隣に立つグレンにすがりついた。

「ごめんなさい、グレンさま……! 私、あなたを、うたがって……」

 自分の胸に身体を預けて泣く彼女を、グレンはそっと抱きしめる。

「……にせもの、って言われて。こんやくも、かいしょうになるかも、って思って……。グレンさまのこと、信じられないのも、いやで……!」

 ルイスは、本音を吐き出していく。

「あなたが、私にうそをついたんじゃ、ないかって。カリーナ様の言う通りかもしれないと、思って。わたし、不安で。もう、いっしょにいられないのかなって。グレンさまは、カリーナさまを愛するのかもしれないと思ったら、くるしくて」

 彼女の頭に触れながら、グレンは静かにルイスの言葉を聞いていた。

「グレン、さま。わたしを、おいていかないで。ずっと好きでいて。ほかのひとなんて、見ないで。わたしのことを、忘れないで……!」
「……大丈夫。大丈夫だよ、ルイス。俺の心は、他の誰のものにもならない。きみだけだ。きみが、俺の唯一だ」
「っ……! 信じて、いいのですか」
「うん。俺を、信じてくれ。絶対に、俺の気持ちが揺らぐことはないから」

 獣人の愛はしつこいぞ、と付け加えて、グレンは、出会った頃を思わせる、やんちゃな男の子のように笑った。
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