【電子書籍化】最初で最後の一夜だったのに、狼公爵様の一途な愛に蕩かされました
「……まあ、俺も、嘘をついて手に入れてやろうと思ったことが、一度もないと言えば嘘になる。ルイスが年を重ねるたび、他の男と婚約をしたって知らせを聞くことになるんじゃないかと、怯えてたよ。でも、できなかった」
「……婚約したあとに番を見つけたら、私を放り出すことになるから?」
「うん」

 一呼吸おいてから、グレンが続ける。

「……そんなことは、絶対にしたくなかった」

 やや力のこもった、彼の声。彼の青い瞳は、どこか憂いを帯びていて。
 彼の言葉が本心からのものであると、理解できた。

「……両想いなのかな、とはなんとなく思ってはいたんだが」

 グレンがちらりとルイスを見やる。
 その通りだったため、ルイスは彼から視線をそらしつつも、否定はしなかった。
 そんなルイスに、グレンは苦笑する。

「……まあ、兄さんは、両想いだと思ってても、番だなんて嘘はつけなかったわけで」
「大事だからこそ、ってやつよね」
「あとから本物が見つかったら、大惨事」

 うんうんとミリィは頷く。

「……私たちだって、幼馴染で、初恋の相手が番だったなんて、夢のような話だと思ったわ。でも、アルバーン家の誰も、兄の言うことを疑わなかった」
「それは、僕らが兄さんを信頼していたから。兄さんがどれだけルイス義姉さんのことを想っているかを知っていたから。兄さんが、好きな人を傷つけるような嘘をつくはずがない」
「だから、絶対に大丈夫よ。お義姉さま。お兄様を信じて」
「兄さんは、こんな嘘ついたりしない。兄さんの片思いをずっと見てきた僕らが保証する」
「ミリィ、クラーク……」
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