緑の手を持つ花屋の私と、茶色の手を持つ騎士団長
「しばらくは忙しくなるだろうけどね。こうして婚約式を行えるのもアンさんがマイグレックヒェンを譲ってくれたおかげなんだ。アンさんは僕たちの恩人だよ」

「いや、そんな……! たまたま毒のない品種だったのかもしれませんし……」

 私が植えた球根は商業ギルドで購入したものとは違い、お父さんたちが旅行先から送ってくれたものだ。

「それがね、魔術師団の方でアンさんの育てたマイグレックヒェンを調べてみたんだけれど、球根はギルドが扱っているものと産地は同じでね。生体情報からみても間違いないと判断されたんだ」

 ヘルムフリートさんが言う通り、産地が同じなのであればその性質も同じものとなるはずで。
 それなのに私の育てた種に毒がないということは、育った環境の違いになるわけで。

 ──もしかして温室に施されている、お祖父ちゃんの術式が関係しているのかもしれない、と私は思い至る。
 


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❀花の名前解説❀
クラテール→ハーブ
カミル→カモミール
ミンゼ→ミント
クリュザンテーメ→菊
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